Kawatana no mori Event Archives
2016年5月29日
photo : Manabu Hieda
一流奏者による本格的なクラシック音楽を親しみやすい雰囲気でお届けするClassic Salon 第3弾。ジャンルや国境を横断し活躍するサクソフォ二スト大石将紀さんを初めて川棚にお招きし、川棚3度目のご登場となるピアニスト新居由佳梨さんと共に、4つの地域交流プログラムとホールコンサートを五日間で行いました。
川棚小学校・小串小学校では、音楽と絵画をかけ合わせたワークショップで、児童たちの自由な想像や発想が解き放たれました。夢が丘中学校では、「サウンド・ペインティング」という即興パフォーマンスのワークショップで、大石さんの身振り言葉の指揮に従って、吹奏楽部員は楽器を演奏したり笑ったり喋ったりと、普段の練習とは真逆の感覚でアンサンブルを楽しみました。
滞在4日目は、コンサート第二部の共演者であるエレクトロニクスの有馬純寿さんも川棚入りし、綿密なリハーサルの合間をぬって、瓦そば・青龍湖・くすの森と、川棚の食と景観もお楽しみいただきました。もちろん温泉も。
最終日、予想の4割増しのお客様で開場前から熱気に包まれるなか、出演者によるプレトークという当館初の試みでは、お三方のお人柄や演奏会の聴きどころなどをお客様にお届けすることができました。
第一部、大学時代の同期生という気心知れた旧友同士でもある大石さんと新居さんによる、涼やかさと熱っぽさを兼ね備えた豊かで見事なアンサンブル。見目も麗しい二人の音楽にうっとりしたりエキサイトしたり。
第二部、個性の全く異なる3人の現代作曲家がサクソフォンの為に書いた作品。作曲家の指示により客席の中で演奏された微分音と重音を駆使した無伴奏曲『SAKANA』に続いて、豊浦町ゆかりの作曲家が40年前に書いた繊細な音響操作を伴う『私ではなく、風が……』によりコルトーホールは宇宙のような異空間へと変貌し、声とビートとサクソフォンの魔術師が大石さんに献呈した「声明」とサクソフォンが交わる作品『SHO-MYO』によって、この世ではないどこかへ連れていかれた方もちらほらいらっしゃったようでした。
先入観、ジャンルの壁、未知の世界に対する拒絶反応 etc.....
誰の中にも多かれ少なかれあるこれらを吹っ飛ばして素晴らしい演奏会となりましたことを、私は嬉しく思います。
やはり、いいものはいいですね。
(イベント企画制作 増田玲子)
大石 将紀 Masanori Oishi サクソフォン
東京藝術大学・大学院修了後、2001年に渡仏。パリ国立高等音楽院・大学院修了。02~04年まで文化庁派遣芸術家海外研修員として研鑽を積み、04年にはアムステルダム音楽院に短期留学。在仏中はソリストとして、またサクソフォン四重奏団「OSMOSE」のメンバーとして、ダヴォス国際音楽祭(スイス)等の音楽祭への出演や、ポンピドゥーセンターやルーブル美術館(共にパリ)のプロジェクトへの参加など幅広く活動。2008年東京オペラシティ文化財団主催「B→C バッハからコンテンポラリーへ」シリーズの10周年・100人目として、パリより帰国第一弾リサイタルに出演し、「藤倉 大:SAKANA ※野中貿易(株)・同財団共同委嘱作品」を世界初演。09年には、エレクトロニクス作品、映像、パフォーマンスを取り入れた「OSMOSE SAXOPHONE」を開催する等、在仏中に引き続き現代作品の発表を勢力的に行う。同年5月にはピエール=イヴ・アルトー率いるフランス・フルートオーケストラにソリストとして招待される。国内外の音楽祭・リサイタル・TV・ラジオに出演、TVCMの録音、雑誌への連載執筆等活動の幅をさらに広げる。教育の分野では(財)地域創造「公共ホール音楽活性化事業」2010・11年度登録アーティストとして「現代音楽は音を遊ぶこと」をテーマに全国の学校、公共ホールでコンサート、ワークショップを展開。近年では、2014年所属するグループ「東京現音計画」で第13回サントリー芸術財団佐治敬三賞受賞、15年5月に初のソロアルバム「NO MAN’S LAND Masanori Oishi plays JacobTV」をリリースほか、「コンポージアム」「武生音楽祭」「細川俊夫 10x6 還暦記念コンサート」などに出演。作曲家達からの信頼も厚く、現代作品のスペシャリストとして演奏歴を重ねている。現在、東京藝術大学、洗足学園音楽大学、東邦音楽大学で後進の指導にあたる。セルマー・アーティスト。
http://www.m-oishi.com
photo : Kouji Hamabe
新居 由佳梨 Yukari Arai ピアノ
東京藝術大学卒、同大学院、スイス国立ジュネーヴ音楽院修了。パリ・ショパン音楽祭やリサイタルシリーズに出演、オーケストラと共演。第7回イタリア・モノポリ国際ピアノコンクール第3位受賞。日本ではスタインウェイジャパン(株)Young Virtuoso Series、ラ・フォル・ジュルネへの出演等幅広く活躍。シャネル(株)Pygmalion Daysシリーズ07年度アーティスト。イダ・ヘンデル他、国内外の著名器楽奏者との録音・共演も数多い。ソロCDを2枚リリース。07~12年度東京藝大伴奏助手および洗足学園音大ピアノ科非常勤講師。12年より地域創造登録アーティストとして全国各地に招かれる中、15年川棚にも出演。同年川棚・コルトー音楽祭ではO.シャルリエ(Vn.)との丁丁発止のアンサンブルで大成功を納める。スタインウェイ・アーティスト。
http://yukariarai.com
photo : Manabu Hieda
有馬 純寿 Sumihisa Arima エレクトロニクス
1965年生まれ。エレクトロニクスやコンピュータを用いた音響表現を中心に、現代音楽、即興演奏などジャンルを横断する活動を展開。ソリストや東京シンフォニエッタなどの室内アンサンブルのメンバーとして多くの国内外の現代音楽祭に参加し、300を超える作品の音響技術や演奏を手がけ高い評価を得ている。第63回芸術選奨文部科学大臣新人賞芸術振興部門を受賞。2012年より国内外の現代音楽シーンで活躍する演奏家たちと現代音楽アンサンブル「東京現音計画」をスタート、その第1回公演が第13回佐治敬三賞を受賞した。現在、帝塚山学院大学人間科学部准教授。京都市立芸術大学非常勤講師。
photo : Manabu Hieda
曲目:
【第一部】サクソフォン&ピアノ
こどもたちへの眼差し―コルトーの目に映った川棚
G.フォーレ:組曲「ドリー」Op.56より”子守唄”、”スペインの踊り”(1894-97)
M.ラヴェル:ソナチネ(1905)
C.フランク:ソナタより第3楽章、第4楽章(1886)
C.ドビュッシー:美しい夕暮れ(1891)
【第二部】サクソフォンwithエレクトロニクス
未知との対話―故郷の原風景から現代の西洋音楽へ
藤倉 大:SAKANA (2007)
湯浅 譲二:私ではなく、風が…… (1976)
JacobTV:SHO-MYO (2013) sax. & soundtrack
photo : Manabu Hieda